ここ、織姫高校も体育祭が近づき生徒達はその準備に追われていた。



 人気のない廊下を歩いていた京太の疲労はしつこいくらいたまっていた。何度も言うよ「たまっていた・・・」と。

 原因はかなりある。

 ひとつは体育祭の準備に忙しい事と・・・・・。

「京太ー!」

 二年B組、坂下京太のバックに一人の女の子が飛び込んできた。

 紫の髪をしたスタイル抜群、キレイとカワイイを両方兼ね揃えただれもがときめく女の子だ。

 そして、京太の疲労の原因その一。

 マリーである。

 魔界からやってきた女で、魔界では敵無しといわれている(らしい)魔術師なのだ。現在、身寄りがないので京太の家に居候中。

 疲労たっぷりゼリーの京太はマリーの飛び込んできた勢いを殺しきれず、そのままドミノのように倒れてしまった。

 適度に誤解されやすい体勢となる。

「ん? どうしたの京太。その気?」

「マリー・・・疲れてんだ・・・・退いてくれ」

「そっかー、その気かぁ」

 京太の言葉など無視し、倒れこんだ京太の胸に両手をもぐりこませようとする。

「やめろや!!」

 京太は自分の貞操(?)を脅かそうとする手を掴み、ストップさせた。

 ぐぐぐぐ・・・・と力のいれあいが続く。

「京太様?」

 廊下の一角から、一人の女性が顔を出し・・・・・そして青ざめた。

 大人っぽい顔立ち押した長身の女性。高校生のお姉さま系ではなく、清純女子大生といった感じの綺麗な顔。この女性こと京太の疲労の原因その二。

 ナーガだ。

 どっかからやってきた自立人間型女性ロボット(仮)で、何故か戦闘系のギミックばかり装備されているアブない女だ。現在、記憶喪失でもあり京太の家に居候中。

「京太様・・・マリー・・・・二人ともこんないつ人に見られるかも知れない所でナニやってんですか・・・・」

 この体勢でこんな事やってたらヘタすると誤解される。そしてナーガは見事に誤解した。

 ナーガの青かった顔がみるみる赤くなっていく。額にゃ青筋がひとつふたつ。

「違う!ナーガ!!そーいうことは世界一小さい折鶴の羽のさっきっちょほども無・・・」

「あー・・・京太って結構胸板厚いねぇー・・・・・あー・・・・・・」

 油が注がれた。

 ナーガの右腕がみるみるうちにガトリングに変形していく。

「マリー・・・・離れなさい・・・・・・・」

 ナーガは感情の起伏がみられない声でマリーを威圧した。

「べー」

 しかし、マリーは京太から離れずあっかんべをしてみせた。しかも嫌味たっぷりに。

 ラウンド1。

「ならば力づくでも!!」

「やってみなさい!!」

 ナーガがどこからか、ソフトボール程の丸いカプセルを辺りにばらまいた。

 カプセル五個は二・三回はねると閃光を放った。

「ボムかっ!」

 マリーは京太を無理矢理起こすと呪文を素早く暗唱しバリアを張った。


 ボムッ。


 カプセルは爆発はせず、赤・黄・青の煙を吐いた。爆発はしていない。

「煙幕ね!?」

「おい、二人ともやめろ!!」

 辺り一面なにも見えなくなった。しかし、マリーの気配は感じ取れる。

 ナーガは煙の中をジグザグに、フェイントをかけつつ走ってくる。速い。もう目の前まできていた。

 マリーが反応するより早く、ナーガは首根っこを掴んだ。



 煙の中だがナーガは戸惑うことなくマリーに近づいていった。

 自分の煙であたりは見えなくなってるが、自分はサーモグラフィでマリーがどこにいるのかぐらいわかる。

 二人の姿が目の前にあった。これからマリーの首根っこを掴み、電気ショックで気絶させよう。いつも京太様にちょっかいかけてるからだ!

 マリーの首根っこを掴むと、後ろからはがいじめにする。

 かわいい耳に唇を近づけた。

「おやすみなさい」

 自分の左手の小指と薬指はスタンガンになっている。


バババババババババッ!!


 ぐったりとなったマリーを床へ投げ捨てると、もう一人・・・京太を捕まえて煙から逃げる。

「ちょ・・・・ちょっと!!」

「落ち着いてください、京太様!」

 お姫様抱っこ状態(逆だがな)にすると、窓を開け飛び降りた。

 スプリンクラーはすでに壊してあるし、二階くらいの高さぐらいなら楽に着地できる。

 ドサッ。

 地面に下りると、安全確認。

「京太様、大丈夫ですか?」

「ちょっと・・・ナーガ? 一体どーしちゃったの・・・?」

 ・・・・・・・・・・・・・・。

 京太ジャネェッッ!!

 自分の腕の中でお姫様抱っこしてたのはマリーだった。

 マリーのよくわからずに目を白黒させていた。

 ・・・・・・・・・・・・・。

「!!」

 間違えたッッ!!!



 二階廊下で電気ショックにより倒れている京太。

「あれ?けーた、どーしたのー? 何でこんなところで寝てんのー?」

 倒れていた京太を一人の少女が揺り起こした。

「うぅ・・・・あ・・イリアか・・・・」

「そーだよ? おはよー。けーた♪」

 この少女はイリア。京太の疲労の原因パート3

 どっかからやってきた宇宙人で腕をゴムのように伸ばしたりできる。やっぱり京太の家に居候中。

「あー・・・・ってイリアその服・・・・・」

 イリアの格好は・・・なんつーか・・・アレだった。

 スカイブルーのメイド服の布の面積をやたらといい具合に減らしたようなきゃぴるんな服。有明の某イベントの同人女子(青年も可)や、某『アニメ&ゲーム&漫画&おもちゃリサイクル店』のコスプレ店員ぐらいしか着ないようなヤツである。

「あはは!可愛いでしょ〜」

 この格好をこの時期にするのは他でもない。

 漫研&文芸プロデュース、一・二年の一部女子達による『妹風チアガールズ』だ。

 童顔で身長ミニモニ以下のスタイル『つるぺた☆はにゃぁん』(?)な女の子たちが、やたらと狙った服を着て「おにいちゃん、がんばれー」とか「兄上様頑張ってください!」とぴょこぴょこはねながら応援するフェミニストが見たら即キレそうな、なんつーか何かを激しく誤解したような(誤解はしてないかもしれないが)チア軍団である。しかもやってる女子全員やる気満々だったりする。

 この体育祭は、良い成績を残せばかなり優遇してもらえる。

 現に昨年、漫研&文芸のロリコンブラザーズはこのチア軍団の応援のおかげで、精神的かつ背徳的にパワーアップしひょろっちい体のくせに部活優勝をし、パソコン二台(高速インターネット環境)、スキャナー一台、コピー機一台、そして十二畳の部室を手に入れていた。

「可愛い・・・というか・・・・」

 ぴょこぴょこやっているイリアは可愛いというより・・・・・・・・『イタい』。

「君もやってみないか?って言われて・・・」

「やめろ!!!!!!」

 即答でした。

「えぇ〜〜可愛いのに〜〜〜」

 よっぽどこの服が気に入ってるようで、ぴょこぴょこしながら頬を膨らませた。

 ・・・・・・・・・。

「はぁ・・・・」

 京太はため息をついた。

 次から次へとトラブルを運んでくる少女達と同居しはじめて三ヶ月。

 一体俺はどうなるのだろう・・・・?







 トラブルピース!特別編







 織姫高校、体育祭当日。

 京太は呆れていた。ていうかもうなにがなんだか状態であった。

 今年の体育祭は狂っていた。

 今年は例年に無いほど個性的な生徒が集まりすぎたためであった。

 この学校の今年度の生徒会チームはとても優秀だが、自分の趣味を全面的に押し出すため、『優勝者は願いをひとつかなえる』というとてつもなくベタで、最高に凄い賞品を用意した。

 さらに化学教師の如月むつき(何月?)が、体育祭の手のかかる部分をすべて丸く収めてくれたので、体育祭は異様な盛り上がりとなった。

 ちなみにこの如月むつき先生は、実験や発明をするのが大好きでどこへ行くのにも実験道具を手放さず、実験や発明を繰り返し、どこかを壊す。化学剤が爆発したり、発明品の誤作動で自爆装置がONになるのは西城茶飯事である。ちなみに将来は世界を牛耳る者になる予定らしい。そして恋人がいたり。



『次の競技は三〇〇メートル欽ちゃん走りです』

「嫌だぁぁぁ―――――・・・・!」

 赤いハチマキをした京太が一人ツッこんだ。

 この体育祭で唯一まともなのはコイツだけだろう。

 なぜなら全員、

「真面目にやってるし!!!」

 生徒席に居た京太の前をクラスの代表選手たちやクラスメートの伊藤篤志がマジな顔で欽ちゃん走り(しかも速い!)のステップを刻んで走っていた。ニ・三人間違えてテツandトモの「なんでだろう」で走ってるヤツもいた。

「えー・・っと・・・こうやって・・・」

「こら!イリア、練習せんでいい!!!」

 ステップを刻みそうになったイリアを慌てて止める京太。

「なにコレ? なにかの儀式?」

 ファンタジーな世界からやってきたマリーにとって、生徒達が変な走りでグラウンドをぐるぐる廻る姿は何かの儀式の踊りのように見えたようだ。

 確かに、グラウンドの中央にナベとか御神体とか置いてみると、儀式みたいに見える。

「うぉぉ・・・・坂下よぉ・・・・・」

 京太の足元からRPGの魔王のようなうめき声が聞こえてきた。(RPGはバンダイの登録商品です)

 見ると、京太のクラスメートで空手部の寺田大門が地にはいつくばっていた。先程の欽ちゃん走り二百メートル走の第一走者でもある。

「どーした、寺田。何の遊びだ?」

「頼みがある・・・・・・」

 そう言うと寺田はほふく前進をしながら京太に近づいてきた。

 京太はその近づいてくる姿が気持ち悪かったのであとずさった。

「な・・・なんだよ?」

「欽ちゃん走りのしすぎで腰が逝った」

「馬鹿か」

 っていうか欽ちゃん走りってそんなに腰使うか?

「なぁ・・・坂下・・・・次に部活対抗リレーがあるだろう?」

「あぁ」

 部活対抗リレー。織姫高校の全部活が参加する、毎年恒例のリレー競技だ。各部活それぞれ自分の部に関係する物をバトン代わりとし一人二〇〇メートル、五人で合計五〇〇メートル走る。優勝した部にはとてつもない賞品が送られるらしい。

 ちなみにこの競技は、裏で不参加生徒もどの部が勝つかで賭けをする。コレも毎年恒例だ。

 去年は例年どおり野球部が勝つと思われていたのだが、漫研&文芸のあの『妹チアガールズ』の出現により、予想外の戦いとなり、萌えパワー全開の漫研・文芸が優勝という大穴大会となった。

 ちなみにコレを的中させたハリーさん(仮名)は、現在マンション経営でボロもうけしているらしい。



 今年は、漫研や文芸の勝率は格段に上がっている。というよりほとんどの部の勝率は同じになった。

 他の部の部員たちが、漫研・文芸の妹チアガールズを真似しはじめ、様々な萌え応援団が結成されたのである。

 三年生のお姉さま様系ばかり集めた『義母応援会』やら、「ご主人様がんばれー」と応援する『檄!応援メイド隊』やら、半裸が似合う美男子ばかりを集めた女子用応援団体『あさくら』やら・・・・(もうワケわからん)。

 萌えのパワーはいまだ未知数なため、倍率が決められなくなってしまったのだ。

 それはさておき。

「俺のかわりに出場してくれぇ〜。これやるから」

 寺田がとりだした(どこから?)のは四枚の券。

「『甘党ベッキ―』の『ミルキープディング』の引換券だ」

 甘党ベッキ―とは織姫高校の近くにある、手作り菓子のお店だ。

 特に『ミルキープディング』(わかりやすくいうと牛乳プリン)は甘党ベッキ―特製シュークリームと一・二を争うほどの人気の品だ。

「OK」

 意外と現金なやつである。

「ありがとぅ〜・・・坂下・・・・・・がくっ」

 寺田は力尽きた。

 腰を痛めているだけで、力尽きる事は99%と無いと思う。

 寺田は、体育祭役員達の手により保健室へと運ばれていった。

「で、俺は一体なにをリレーするんだ?」

 ミルキープディングの券をポケットにしまいつつ、つぶやく。

「バレー部はバレーボールだったよ」

「テニス部はテニスラケットでした」

「そうか、じゃあ空手部は・・・・・・・」





『次は部活対抗リレーです』





「畳かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 グラウンドのコースを京太は涙を流し、絶叫しながら走っていた。

 背中には空手の大地こと、緑の畳をかついでいる。

「んなもんリレーにできるわけねぇだろ!!!!!」

 といいながらしっかりリレーできている京太。畳を第二走者へと渡すとすぐに崩れ落ちた。

「京太君、大丈夫?」

 青い空だけしか見えない視界から、西村冴子が顔をのぞかせる。

 この彼女は、京太がこの町へ引っ越してきた時の一番最初の友人である。

「微妙・・・・」

「畳だもんね」

「あぁ・・・・」

「でも京太君はいいほうだよ」

「え?」

 京太が起き上がると・・・。

「吹奏楽部、アレだもん」


ずざざざざ・・・・


 吹奏楽部がリレーしてたものは・・・・

「グランドピアノ!?」

「フィギュア同好会」

「カーネル・サンダース!?」

 カーネル・サンダースとは、某ファーストフード店の前に立っている白タキシードの守護神のことである。

「極めつけはミリタリー研究部」


キュラキュラキュラキュラ・・・・


「戦車じゃねーか!!!」

「そうなの、なんか近くの陸軍基地から借りてきたらしいの」

「陸軍も部員五名の同好会なんかにか戦車をかすんじゃねぇ!!!」

 ミリタリー研究部は戦車を操縦し(どうやって?)リレーしている。

 明らかにルール違反だと思われるが、周りも面白いので止めようとはしない。

 そうこうしているうちに、アンカーが走ってきた!

★『トップはなんと料理部! 料理部です!!!』



―――――後。



 手作りクッキーをバトンに料理部女子部長宮内理絵がゴールテープを切ったが、そのあとのその手作りクッキーを手に、とある男子に告白するが失敗。競技には勝ったが恋には負けたため失格(何故?)。というわけで妹パワーでバリバリの漫研が繰り上がり一位。二位には根性バットを携えた根性野球部(普通の野球部とは別)。三位マイク片手に実況も兼用した放送部(さっきの★の奴がアンカーでした)。京太が走った空手部は九位。

 

 体育祭はその後も『棒倒し(負傷者二〇名の大乱闘)』や『借り物競走(クラゲを借りて来いっていうのにはビビった)』など、やたらと暴走した競技がたたみ込むように現れていき、時間の感覚もままならないまま昼休みとなった。



 昼食時間、おのおのが親や友達と一緒にビニルシートにすわり、弁当や鍋(持参?)をつついている。グラウンドでは『毎年恒例体育祭昼食時間のカラオケ大会』が行われており、京太のクラスの担任でありアニオタ(アニメオタクの略)の保坂新太郎が恥も外聞も無く「もえあがれ、もえあがれ」と『翔べ!ガンダム』を熱唱している。

 京太のビニルシートには同居人のマリー、ナーガ、イリアの三人がすでに居た。

「おかえりー京太」

 マリーとイリアはすでに弁当(ナーガ特製)をつついていた。たいしてナーガは弁当には手をつけず、正座してまるで母親のように京太を待っていた。ちなみに書き忘れていたが京太の父と母は外国での仕事で移住している。姉は大阪でお好み焼き修業。

 この体育祭に来てるわけ無かった。

「なんでだろ・・・まだ半分終わっただけなのにこんなにも疲れるとは・・・・」

 京太はどかっと腰をおろした。ナーガが水筒からお茶を淹れてくれる。

「イリアは楽しいから全然疲れないよッ♪」

「こんなんで疲れるなんて軟弱ねぇ」

 普段の京太の疲労の種である疲れ知らずのノーテンキ初号機と3号機がしれーと言った。

「京太様、次の出番はいつなんですか?」

「んー・・・午後はほとんど無いな。最後の騎馬戦ぐらいか」

「あ、それイリアも出る〜」←3号機

「あたしも」←初号機

「わたくしもです」←弐号機

 てゆーか二年B組は全員参加だ。

「しかし・・・この調子だとなぁ・・・・・」

 この調子だと、最終競技の騎馬戦はメチャクチャになるだろう。

 生徒全員盛り上がっているし、なによりマッドでサイエンティストな教師、如月むつきがまだ動いていない。

 京太の不安を汲み取ったのか、マリーが明るい声を出す。

「安心して! 京太に危害を与える奴は私が情け容赦なく焼き殺すから」

「焼くな殺すな」

「そうですマリー、そういうことはバレないようにやるんです」

「違う」

「競技中にやるより競技前にやったほうが良いと思うよ〜♪」

「だからするなぁッ!!」

 京太の怒号が空を切った。

 グラウンドでは生徒会長が「アニメじゃないッ」とまたアニソンを熱唱していた。ダブルゼータ?




 午後も暴走した競技ばかりであった。

 パン食い競走では、コースの途中にパンはパンでも残飯が吊り下げられていたり、『ラブコメ鬼ごっこ』という、女子十数人が男子一人を追いかけ回すという、何がなんだかよくわからん競技(しかも京太にとってあまり笑えない競技だったり)があったり、数万枚のドミノが並べられた道を通る一〇〇メートル走(第一走者がすべて倒してしまったため競技中止。倒しちゃった生徒は今保健室)あったり・・・。

 途中、赤組と白組とは別の黒組が乱入し体育祭の存亡が危ぶまれたが、生徒会とミリタリー研究部の戦車と覆面隊長ジュライマリ(コードネーム)率いるマリー親衛隊ロイヤルガーディアンズによって数分のうちに鎮圧された(黒組の連中は今国立病院)。



 赤組と白組はヌきつヌかれつ・・・・・。(ぬをカタカナにするな!)

 とうとう最後の競技となった。

 現在の得点、赤組二億三千四百六十万百十三点。白組二億三千三百八十一万六千三百十五点。

 逆転のチャンスは十分ある(ほんとか?)。

 最終競技は『ダイナミック!アトミック! 二・三年男女混合大騎馬戦大会 〜戦いは誰のために〜』だ。

 サブタイトルまでついているあたりこの競技の脅威さがうかがわれる。

 この騎馬戦。ルールは至って簡単。とにかく相手の騎馬を崩し、どちらかが全滅するまで続ける。

 女子はちょっと非力な為、武器所持が認められている。まぁ武器を所持するためには生徒会の審査を通らなければならないが・・・・・。



「本当に審査があったのか・・・・?」

 京太は馬の上で絶句した。白組女子が手にしているブツはスタンガンやらモーニングスターやらサダム・フセインの写真パネルやら工事現場のおじさんが交通整理のときに使う赤く光る棒(武器か?)やら・・・・。

 あんまりな武器ばかりであった。

「京太様ー、後方支援は任せてくださいー!」

 今、自立人間型女性ロボットが背中に『ツイン』で『バスター』な『ライフル』をしょって京太に手を振っている(合格)。

「やめろぉぉ!!」

 審査なんて生徒会のさじ加減ひとつであった。

 しかし、ナーガの装備も凄いが、それ以上に凄いのがそれを支えている馬の女子である。見れば全員ボディービル部の女子たちであった。

「けーた!見てみてー!」

 京太のすぐよこをUFOに乗ったイリアが通り過ぎていった。

「お前それ馬じゃねぇじゃん」

「イリア・ミューティレーション!」

 イリアがそう叫ぶと、UFOから円方の小さい光が出てきて・・・・。

『ピーッ!』

 小さいイリアロボ(非売品)が六体出てきた。

「なんだそりゃ」

「ナーガと一緒に造ったミニイリアロボだよー!」

『ピーッ!』

 バレーボールほどの大きさで、丸い手と二頭身の体をしたミニイリアロボたちは、そのチームワークで可愛く組体操をやっている。

『ピーッ!』

 扇になった。んで一体余った。

「ミサイル三発装備していて、いざとなったら自爆するんだってー♪(ナーガ談)」

「しまえ!!!!!」

 ミニイリアロボ、撤収。

「京太、いざとなったらあたしが守るから」

 横からマリーが顔を出した。魔法を使う気満々な顔だ。

 非ヒューマンの女三人が集まっている赤組騎馬戦チームはもうマジで最強チームであった。

 対する赤組は・・・・。

「げっ」



 白組のやからもアホだった。「脳へ行くハズの栄養がすべて筋肉へ行ってます」的な生徒が一列に並んでいた。しかも女子達の持っている武器は・・・・・なんというか・・・・もう・・・・。

 五光石やらソーディアンやら・・・・・。

 もはやこの世の物ではなかった。大丈夫かこの学校?

 一目見ただけでは、この戦力差はイジメの域である。例えるならアリと象、竹ヤリと核、ガッツ石松とビルゲイツ(パソコンね)、といった具合だ。まぁこれは見ただけの話だが・・・。

「なんで宝貝とかあるんだ・・・?」

「あ、全部『(C)如月むつき』って書いてあります」

 視力八.〇のナーガが答えた。すべてあの先生が作ったものらしい。爆発しないことを祈る。

「それでは『ダイナミック!アトミック! 二・三年男女混合大騎馬戦大会 〜戦いは誰のために〜』をはじめます」

 グラウンドに武装した審判が出てきた。この戦いの審判は、ガチャガチャで三回連続でドムをだし『黒い三連星』を実現させた二‐B担任、保坂新太郎である。

「いちについて・・・・よーい・・・・・・・・」

 ごくり。

「戦開始!!」

 グラウンド中に声が響く。

 両組一斉に相手に向かって走った。最後の聖戦である。

「うぉぉぉぉぉ!!!!!」

 赤組の斬り込み隊長、伊藤篤志が白組の群に飛び込んでいく。腕にバンテージを巻いてとってもワイルドに仕上がっていた。が。


 カチッ。


 なんか踏んだ。

「え?」


 ズシャッ


 篤志の馬達の足元から赤い染色塗料が吹き上げた。

 篤志はシャア専用みたく赤く、馬達は恋人のごとく薔薇色に染まった。

「何コレ・・・・?」

『なおこの競技のみ、グラウンドには様々なトラップが隠されてます』

 つば飛ばしまくりで熱狂していた実況(兼解説)がしれーと言った。

『トラップは如月むつき先生特製の地雷です。踏むとコショウが吹き上げたり足をとられたりパイが投げられたり妨害電波によりアニメ声優のラジオが受信できなくなったりします』

「最後のは何!?」

『ちなみにたった一つだけですが、如月むつき先生が米軍基地から盗んだっぽい、マジな地雷みたいなのが・・・・』


ずどぉぉぉぉぉんん!!!!


 グラウンドの真ん中に高さ約5メートルほどのミニサイズのキノコ雲が吹き上がった。

 いきなり当たったようだ。

 爆発の規模は小さかったが、腐っても地雷。爆風で馬のほとんどがくずれ、赤白問わず戦力が九十五%激減した。

 グラウンドはハンバーガーヒルと化している。

 この爆風で残ったのは、サイボーグの底力と異常足腰少女らのナーガ組。自分の魔法で衝撃波を発生させて、爆風を相殺したマリー。それに守られた京太組と冴子組。イリアは上空に吹っ飛ばされた。

 白組もほとんど吹っ飛ばされていたが、ただ一人。大将格の男子組が残っていた。

 半壊した放送部テントが吼える。

『爆風に残った生徒は白組では一人のみ! その男こそ『新聞部・生徒会主催 織姫高校一抱かれたくない男グランプリ』で中等部あわせて742票(ほぼ5割)獲得し二年連続でグランプリとなったナイスガイ!J‐anこと郷田玉緒君だぁぁぁ!!!!!!』

「ウホォォォォォ!!!!!!」

 爆風によってできたハンバーガーヒルにJ−anの影が光った。

「身長二八〇センチの巨体に、ダチョウの卵もすっぽり入る手! ムッキムキの体はまさに人間アブトロニ○ク!!!!(ネタ元が少し古い)」

 白組男子らはその咆哮に獅子の姿を垣間見、興奮の叫び声を上げた。

 そして女子全員、その咆哮にケモノの気持ち悪さを垣間見た。一名除いて。

「J−anさん素敵!!!」

 その一名こそ、J−anと同じクラスで美人系の目がねっ娘な学級委員長、菊地桃香である。真面目で人当たりも良い菊地桃香は何故かJ−anにLOVEっていた。

 J−anと菊池桃香。美女と野獣どころではなく、美女とキマイラといっても過言ではない(それ以上だと思うけど例えが思いつかないや)。

 この異色カップルは現在の織姫高校の七不思議の一つであったりもする。(実際は不思議の数は七つどころではなくなっているのだが)

「ウガァッ!」

 J−anは京太に狙いを定めると一気に突撃してきた!

「お・・俺ェッ!?」

「京太!」

 マリーは素早く魔法を詠唱する。そして指を地属性の形に組む。

「グライド!」


めきょッ。


 京太の目の前で強大な岩が地面から現れた。

 岩の壁である。さらにマリーは別の呪文も素早く詠唱した。指の形は風の属性だった。

「スマッシュ!」

 風の刃が岩を砕き(!)、J−anに横殴りの岩の雨を叩きつけた。

「おい!マリー!!いくらなんでもそりゃやりすぎだろ!!」

「こんぐらいやらないとダメよ!!」

 マリーの言うとおりだった。大量の岩の雨にも負けずJ−anがつっこんできてる。凄すぎ。

 このいつに無く迫力満点な戦いに応援席も興奮していた。

「いけー!」

「がんばれぇ!」

「マリー様ぁ!」

「ナーガたん(;´Д`)ハァハァ」

「駄スレがぁっ!!!」←殴

「J−anッ!!」

 応戦している生徒ももう自分で何言ってんのかわからなくなっている。

 妹チアガールズ等の特殊応援団も暴走していた。ぴょいこらぴょいこら動き回り、ネコ耳(!)まで付けてきた。挙句の果てには、長いアイスキャンディ棒を取り出しそれを上目使いにはにかみつつ…舌を使ってレロレロとピチャピチャと舐めはじめ、それを見た男子生徒どもはもう全員『Σ( ̄Д ̄;)』とどえらい事になり彼女達の服のポケットに札束を詰め込み詰め込み、それに気分を得したチアガールズは(これ以上書くと図書館で閲覧できなくなるので以下自主規制)



「京太様ぁッ!!」

 ナーガが背中にしょってあった『ツイン』で『バスター』な『ライフル』を解放した。

 黄金色の光の束が一直線にJ−anへと向かっていく。

 京太にやめろといわれていたのだが、自分にとってこの新装備は京太の為にある。これを使った事で京太に嫌われても……(京太は『自分以外の人が怪我する』からやめろと言ったのだが、ナーガはわかっていなかった)、

 京太様が助かるのなら自分はどうなっても構わない。例え地獄の業火に焼かれようとも…、例え聖なる刃に切り裂かれようとも…、例えカラオケボックスで二時間ノンストップで海援隊メドレーを歌わされようとも……。

「ナーガ!!」

「すいません京太様! でも京太様のお身が・・・!」


ずどぉぉぉん。


 光の束はJ−anにナイス直撃。

 ダメージ的にもビジュアル的にもダメージは二〇〇〇をくだらない・・・・・・

 ハズだ。

 ハズだった…。

 直撃した時の砂煙が晴れた時には・・・・・

「「「「「『「「「生きてるッ!?」」」』」」」」」

 全員の心がひとつになった瞬間であった。『第九話 瞬間、心、重ねて -Both of You , Dance Like You Want to Win!-』である(違うけど)。

「私の新装備が・・・・生身の人間に・・・・」

「ていうか何者だアイツは」

 冷静にJ‐anの存在についてツッこむ京太。

「フガァッ!!」

 J−anはもはや不死身ファンタジア文庫だった。

 何故か、マリーの魔法もナーガの武器も効かない。

「ガァァァァ!!!」

 J−anは今度はマリーに狙いを定めた!

「きゃあ!」

「マリー!!」

 その時。

「マリー様になぁにをするぅ!!!!」

 ハンバーガーヒルからある人物が起き上がった。

 その人物こそ、この織姫高校のマリー親衛隊の隊長、先程の黒組の鎮圧にも立ち上がったジュライマリ(コードネーム)である。彼(もしくは彼女)には敵が多いため、頭に怪しさ大爆発のマスクをかぶって素顔を隠してある。

「フゴッ?」

「マリーさまを守るんだぁ!!」

「「「「「オ〜〜〜〜・・・・・・・」」」」」

 すでに失格となったハズの生徒達がゾンビのごとく復活し、J−anに群がっていく。

 とっても気持ち悪い光景であった。

「ファイヤーボール!」

 ゾンビ軍団に気をとられていたJ−anの隙を狙ってマリーが炎の呪文を唱えた。

「ゴォッ!」

 それを素手で受け止めるJ‐an。

 もはや体育祭はてんやわんやだ。

 グラウンドではJ−anとゾンビ軍団との攻防+マリーとの決闘で興奮しており(すでにルール無視)、応援席では何故か赤組と白組が迎激戦を行っておりそれにナーガも参加している。特殊チアガールズはもはや、ここでは書けないようなアレで繁華街のようにキラキラしていて、さきほど上空へに飛ばされたイリアは運良く一人だけなんも被害を受けてなくて、背中に居た冴子は放心していて………。

「ライトニング!」

「マリー様ぁ!!」

「ウガァァァァァ!!!」

「兄上様……怖い……………」

「いえあぁ!!」

「しつこいですねぇ!!」

「ライトニング!!」

「虎牙連斬ッ!!」

「みんな!いまこそマリー親衛隊の力を合わせるのだ!!」

「J−anさん!おねがい…がんばって勝って!!!」

「この極悪魔術師!また封印してくれるわ!!!」

「アンタまだ本編にも出てないでしょうが!!」

「ウガァァァァァァ!!!!!!!!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・。







「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」













「京太君?」

 気がつくと京太は教室に居た。

 隣の席の冴子が心配そうに顔をのぞかせている・・・・・。

 ・・・・・・。

 そういえば・・・今は確かLHR(ロングホームルーム)だった・・・・。

(寝てたんだな・・・)

 夢オチである。

 そう思うと京太は安心した。

 あの夢がマジだったら、あの後俺は精神崩壊を起こしていただろう。

 ひじょ〜〜に・・・・ひじょ〜しきな夢であった・・・。

「大丈夫?」

 冴子がまた尋ねる。

「あ・・あぁ・・・大丈夫」

 周りを見た、話し合いはかなり進んでいるようだ。

 マリー達も真剣に聞いている。

「・・・・えーっと・・・冴子・・・・」

「ん?」

「何を話し合ってたんだっけ・・・・・」

 ちょうどその時、黒板の前にいた学級委員がプリントを読み上げた。




「今度の体育祭の最終競技は『ダイナミック!アトミック! 二・三年男女混合大騎馬戦大会 〜戦いは誰のために〜』に決まりました」



 この時の京太の机からの転げ落ちっぷりは他の漫画の比ではなかった。



「まさか・・・・まさかな・・・・・・」




 この後、一番上からまた読むと永遠に京太君の苦しみを味わう事ができますが、それだとメチャクチャ京太君が可哀想なのでここらへんでおしまいにしましょう。







―――――――END




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